川崎さん:自然環境を活かした子育てを実践
梅雨が明け、夏本番。
お試し住居「勉知庵(べんちあん)」で聞こえる音が、ウグイスのさえずりから多様な蝉の声に変わりました。
そんな勉知庵がある金砂郷地区で暮らしながら溶接業を営む先輩移住者の川崎さん(50)に、移住経験談を伺いました。
目次
移住のメリット・デメリット
早速ですが、移住して良かったです?
以前暮らしていた地域に比べて空気が良かったせいか、当時3歳の長男のアトピーがみるみるうちに良くなっていったのね。
喘息も治って。喘息で入院していた息子がスポーツをやってる姿を見るだけで、凄く嬉しい!!
そんな時に植樹祭の話を聞いて、地域への感謝の想いを込めて息子と参加したんだ。
印象的だったのが、北茨城市の人があんこう鍋を振る舞ってくれたの。
山を育てると海が肥えるからありがとうって。
山に行って海の人から感謝されるなんて、山と海の繋がりを知って感動したよ。
そんな経験もあって、中学生になった息子が今でも自然遊びにくっついてきて「面白いね、面白いね」と一緒に遊びながら学んでくれるんだ。
やる気になったら畑でも田植えでも、何でも体験できるのも良いね。
健康になったことはもちろん、中学生になっても一緒に楽しく遊べるなんて嬉しいですね。
僕も、娘が大きくなっても遊んで欲しい(笑)
デメリットに感じるところもあれば、教えてください。
交通の便が悪くて、子供が高校へ通学する為に駅まで送迎するのが大変なだけかな。
今暮らしている久米小学校区は小・中学校が統廃合されても残る場所だったからいいけど、金砂郷地区(以後、金砂郷)の北の方はバス通学で本数も少ないよね。
息子はサッカーチームに通うのに7kmくらい自転車で行って、体が鍛えられたという副産物もあったけど。
あと、こっちに来てから花粉症になった(笑)
市内で自動運転バスの実証実験をやってるので、早く普及されると良いですよね。
ちなみに僕は、都内から移住して花粉症が劇的に良くなって、また春が好きになりました(笑)
移住先を選んだ理由
移住先を金砂郷に決めたのは、どんな理由だったんですか?
正直言うと、以前の街に比べて土地が安かったから。
ただ、小さい時に親に連れてきてもらった思い出も心に残ってて。
自然が溢れてたり、川遊びしたり、美味しいものを食べたり。
分譲地があることを知って見学に来た時に凄く澄んでいる感じがして、奥さんも「良いところだね~」ってなって。
そんな環境で子育てしたいという思いもあったんですか?
思うね。いっぱい教えたい。
まだまだ教えたいことがあるけど、子供は習い事があったり自分は仕事があったりで、時間が足りないよ。
自然豊かな場所での子育て
教えたいこと?
買うおもちゃじゃなくて、身近にある竹とかを使って自分で作って遊ぶおもちゃ。
例えば笹舟とかでも勉強になるのね。
まっすぐ流れて行くだけじゃなくクルクル回ったりして、川の流れを知る勉強になるわけ。
俺達は上から流して下まで追っかけていってって馬鹿みたいにずっとやっていたけど、そういうのとか、色々とやらせてあげたいことが沢山あって。
自分の原体験を共有して、お子さんに伝えたいことがあるんですね。
成功体験とか達成感とか。それは、スポーツでも何でもいいんだけど。
竹とんぼにしても、その辺から採ってきた竹が自分の手で飛ぶんだよ!
そういうの不思議じゃない?
他にもその辺にある物で言えば、松ぼっくりだって良く見ると凄く良くできてる。
種子がヒラヒラ落ちるのなんかを見せてあげたいし、子孫を残すために上昇気流に乗って飛んでいくこととか、説明しながら教えてあげたい。
自然遊びの中から学ぶことって多いですよね。
一緒に遊ぶ過程で、どんなことを感じとって欲しいですか?
そういうことが無駄じゃないとか、ただの雑草じゃないとかかな。
一緒に草刈りしながら遊んだりね。
あと、もう中学生だから刃物を使わせて竹とんぼ作りなんかもしてて。
なんで飛ぶの?どうして逆回しだと飛ばないの?って経験しながら理解するし、大きな怪我はダメだけど小さな怪我は財産だと思うから。
これ以上やったら怪我するとか、身近にある物でも少し手を加えると別物になるとか、そういう経験の延長が今の日本の工業を支えてるんじゃないかな。
確かに、人間のクリエイティブの根本はそこにあるかと。
デザインなども自然から持ってくること多いですしね。
そう、自然からだからね。
蝶々の羽が水を弾く仕組みを利用したセルフクリーニングの素材が生まれたりするし。(生物を模倣する科学技術:バイオミメティクス)
俺ができるものは、何でもやってやりたい。
川崎さんも、そんな風に育てられたんですか?
うちの親父は遊んでくれなかったけど、夏休みとかに「こういうのやったことあんのか?」って教えてくれたことを今でも覚えてるんだ。
毎日教わったわけじゃないのに、あの時こうやってたなって記憶が残ってて。
結局、その時に成功して楽しかったわけだから、それをやってやりたいよね。
川崎さんは、うなぎ釣りやピザ釜作りとか色々なことを楽しんでて、遊びの名人だと密かに尊敬してました(笑)
そんな原体験があったんですね。
地域への馴染み方
話は変わりますけど、移住した当初から地域内に知り合いや友達はいたんですか?
いれば良かったと今は思うけど、1人もいなかった。
当初は近所に家も少なかったし。
移住して2~3年くらいは、人付き合いが面倒だと思ってたのね。
金砂郷が地元だと間違うぐらい地域に馴染んでるので、意外でした。
やればやるほど面白くなってきて。
最初は、蕎麦も打てないのかと言われたけど「いやいや、できる人のが少ないから!」って今振り返ると笑える(笑)
蕎麦の名産地なので、蕎麦打ちセットが1世帯に1つあるぐらいですしね(笑)
面倒だと思ってた人付き合いを始めたキッカケは何だったんですか?
川や溜池とかが近くにあるでしょ。
自分が子供の時に大人が注意してくれたように「ダメだぞ、気をつけろよ!」って言って欲しいから、子供を連れ歩くようにしたのね。
地域の為ではなくて、自分の子供の為と思えば苦じゃなくて。
地域の人が息子に「そっちは危ないぞ!」って初めて言われた時には感激したもんね。やった甲斐があったなって。
いきなりそんな関係は築けないから、自分や家族を知ってもらって。
子供の為に通学路の草刈りなどをやってるうちに付き合いが増えてきて、今では「いつでも何かやってるよね」と褒められたり頼られるようになってた(笑)
わかる~!頼れる兄ちゃんって感じが滲み出てますもん(笑)
そうすると、災害があっても「川崎君のところは大丈夫か?」って声をかけてもらえるようになるし。
人と交流してれば自然と「そういえば○○さんちは、大丈夫かな?」ってなるんだよね。
それって絶対に大事!
面倒な人は面倒だけど、一人くらい知り合いがいれば、その人にも繋がりがあるから何とかなるしね。
例えば、近所に人付き合いが苦手な人がいるんだけど、うちの母とは喋るのね。
震災の時に母から「水が無くて困ってるらしい」って聞いて、水を確保してあげたこともあるし。
何の繋がりもなくて、困ってることすら知らなかったら出来なかったでしょうね。
もしも同じ世代の人と付き合うのがギクシャクしちゃうのなら、別の世代の人でも、1人だけでも繋がるのでも良いと思う。
その人に繋がりがあるから。
災害時でも通常時でも助かると思うんだよね。
付き合いって、そんなもんだと思うな。
不測の事態が起きても何とかなるって安心しながら暮らせるって幸せですよね。
だからこそ、誰かが困ってる時に助けたいって余裕も生まれるし。
金砂郷の魅力
最後に、川崎さんはどんな所に金砂郷の魅力を感じてますか?
ギスギスしてないのが一番かな。締め付けはないよね。
今の時期(8月)の田んぼは緑の芝生みたいで綺麗だけど、4月下旬はでっかい湖になるじゃん。
満月の時の田んぼは水面にも満月が浮かんでて、凄く綺麗でさ。
川沿いは菜の花の黄色で堤防が染まってて、「何だよこれ!タダで見せてくれんの?」ってくらい綺麗な風景がいっぱいあるんだよ!本当に。
水面に青空が映る朝も良いですよね~!山も新緑で染まってて。
数日しか見れないのが残念だけど、とんでもなく綺麗!!
こっちに来る機会があれば、「あっ!」と思う景色に出会った時に車を停めて見てほしいよね。
「あっ!」と思う景色が、い~っぱいあるけど(笑)
い~っぱいありますね(笑)
それと、街にいると色々と言われるのね。
子供が土遊びしてると、「今日は頭からお風呂に入るようだ」って言われたり。
まぁ、俺はそんな風に遊ばせてたから余計とそんな風に言われてたのかもしれないけど、こっち来たらそんなの無いじゃない。
危ない所に行かなくても、その辺で子供が遊べるから凄く安心だし、家のすぐ近くなのに他所で体験できないことがいっぱいできるし。
半径100mが、めちゃくちゃ豊かですよね(笑)
そういうこと!! 本当に豊かだね(笑)